某月某日、きょーかの髪が少し伸びてきた頃。
「おろ〜?きょーちゃん珍しいね、髪切らないのん?」
「うん……ちょっと、ね」
 いときりの質問の答えるように見せたのは綺麗な赤色のかんざしだった。
「ふーむ……これ、すげをから?」
「うん。……まったくあの馬鹿は!わたしの髪短いの見ればうまく使えないって分かるじゃない!」
「(すげをなら素でわからなかった可能性が……。)それでも着けたいからがんばって伸ばしてるんやね」
「そうなの。でも髪伸ばしたまんまじゃ落ち着かなくって……」
「なるぽっどって感じだ。あたしから、すげをにガツーンと言ってこよっか?」
「んーん、大丈夫。だってすいげつなんだもん」
「愛だねぇ……」
 拗ね顔のきょーかを見て、いときりは聞こえないように呟いた。

 数日後。
「あれっ、珍しいねきょーか。髪伸ばしてるの?」
「……ええ。ちょっとね」
「……何か怒ってる?」
「怒ってない!」
「怒ってるよね?!」
「怒ってませんーーー!!」
「うわあーーーっ!斧はやめて!!僕が悪かったから理由を教えていただけますでしょうか!」
「……すいげつ、かんざしくれたでしょ。でもわたしの髪の長さじゃ、うまく使えなくて。くやしくて、ちゃんと身に付けたくて、だから……うぅ……」
「ごめんね、気づけなくて。女性の装飾品は詳しくないから……」
「わあああん!わたしなんで髪短くしてるんだ!!」
「戦闘で邪魔になるからなんだろう……。ほんっとうにごめんね。そこで提案なんだけど、一旦そのかんざし返してもらえないかな」
「えっ」
「ちょっとやりたい事があってね」
 呆気にとられたきょーかの手からかんざしを抜き取ると、何やら細工を施した。そして、
「すいげつ、これって……」
「うん。ヘアピン?なら使いやすいのかなって思って、そういう風に変えさせてもらった。……ダメかな?」
「ううん、嬉しい!ありがとう!」
 ニコニコしながら付けた元かんざしはきょーかの黒髪によく似合っている。
「あとこれもね」
「美容院無料券……」
「気になるんだろう、髪」
 アストルティアの不思議な技術なら一瞬で髪の長さや色を変えることができる。
「僕は短い髪のきょーか、好きだから」
「もう、馬鹿。そんなに顔赤くするなら言わなきゃいいのに」
「そう?じゃあ……」
「……。だからっていきなりキスするのもどうかと思うわ!」
「嫌?」
「……そんなわけないじゃない」
「じゃあもう一回」
「美容院!美容院行ってくるわ!!」
「あっ……。逃げられちゃった」
 可愛いなぁ、と呟いた声は誰に届くでもなく溶けていった。







大昔の書きかけを書き終えた感じです。
すいげつを調子に乗らせたかった。